
Career Improvement キャリアを磨く
AI時代におけるハイクラス人材の価値とは
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リサーチャー
原田 雅志(はらだ まさし)
1984年生まれ 埼玉県出身
AIの進化と普及は、ここ数年で加速度的に進んでいます。ChatGPTをはじめとする生成系AIは、単なる情報検索にとどまらず、文章作成、アイデア出し、プログラミング、さらにはマーケティング戦略の立案など、知的労働の一部を担うようになってきました。
こうした技術の進化は、人材の価値の定義そのものを問い直しています。弊社GIPがよく転職支援させていただいている経営層や部門長クラス、コンサルやファンド等で活躍されている人材、いわゆる「ハイクラス人材」にとって、自分の市場価値を維持・向上させるにはどうすればよいのか。本稿では、何がAIに代替され、何が人間にしかできないのかという視点から、AI時代においてハイクラス人材が磨くべきスキルについて整理していきます。
1.AIに代替されやすいスキルとは
まずは、AIに代替されやすいスキルの特徴を整理しましょう。端的に言えば、「ルールベースで再現性の高い業務」「大量のデータ処理が求められる業務」「パターン認識が主となる業務」等はAIが得意とする領域です。
【例】
・会議資料やレポートの定型的な作成
・過去の事例、データに基づく意思決定
└財務諸表の分析、それに伴う予測など
└マーケティング分析や調査の要約など
・コーディングやテスト(特にルーティン作業に近いもの)
つまり、「知識の深さ」や「スピード」が強みであった人材は、AIとの競合リスクが高いと言えます。コンサルや金融機関においては、資料作成や市場調査等の初期作業の大部分がAIに代替される可能性があると言えます。
2. AI時代に求められるスキルとは
一方で、AIには代替されにくいスキルも明確になってきています。共通するのは、「人間の感情・関係性」「不確実性の中での意思決定」「ゼロイチの創造性」が関わる領域です。
【例】
経営意思決定:事業ポートフォリオの見直し、資本政策など複雑かつ多面的な意思決定
人材マネジメント:評価・登用・退職対応など、感情を含む判断
顧客企業とのリレーション構築
組織変革・PMIなど、ステークホルダー間の調整・合意形成
未知のテーマに対する探索的戦略立案
こうした業務では、感情的な配慮や信頼関係の構築、臨機応変な対応など、人間ならではの繊細な判断が求められます。特に、正解のない問いに向き合い、関係者の利害や価値観を調整しながら意思決定を行う場面では、単純なアルゴリズムでは対応できません。
3. ハイクラス人材が今こそ磨くべき力
上記を踏まえ、ハイクラス人材が今後意識的に磨くべきスキルは以下の3つに整理できます。
① メタ認知と意思決定の質を高める力
AIが大量の情報を処理し、選択肢を提示してくれる時代だからこそ、「自分は何に価値をおくのか」「何が重要か」を判断する“メタ認知”が重要です。また、複数の正解がある中での意思決定能力こそ、人間が担うべき役割です。
② 他者を動かすコミュニケーション能力
チームや組織、顧客、株主といった他者との関係性を築き、共感を得ながら物事を前に進めていく力は、AIには代替できません。対話・交渉・ファシリテーションといった、いわゆる「関係構築力」は今後ますます重要になります。
③ 自分の専門領域×AIの活用リテラシー
専門性が高い人材ほど、AIを活用することで圧倒的なアウトプットを生み出せます。たとえば、経営企画に携わる人材であれば、AIを使って業界トレンド分析を高速化し、議論の質を上げることが可能です。自分の専門領域におけるAIの適用可能性を探る力は、競争優位の源泉となります。
まとめ
AIの登場により、「優秀さ」の定義が変わろうとしています。知識量や処理スピードに依存してきたキャリアの延長線上には、AIとの競合が待っています。一方で、「問いを立てる力」「人を動かす力」「不確実性と向き合う力」は、AI時代における本質的な人間の強みです。
ハイクラス人材に求められるのは、単なるスキルアップではなく、「自分の価値とは何か」を見直し、AI時代にふさわしいアップデートを図ること。その問いに向き合い続ける姿勢こそが、これからのキャリアを切り拓く鍵になると思っています。